手の舟状骨は、手首にある小さな8個の骨の一つです。
骨折していても、ねじれた形をしているために見逃されやすく、骨折も治りにくいと言われています。
ギプス固定も他の骨折より期間が長くなりやすく、2、3ヶ月に及ぶこともあります。
若い人に多い骨折で、なかなか長い間仕事を休むわけにもいきません。
したがって、ギプス固定をせずに、手術して治すことも多い骨折です。
当院では、特別なスクリューを使って手術を行います。
メイラ社 DTJ-screw Double threaded screw, Japan
手術時間は、骨移植しないと3分~29分で、平均11.4分でした。
11年間で、13歳~79歳の方、98人が舟状骨骨折で受診されました。
そのうち、約半数の52人が手術をしています。(男性47例、女性5例)
平均年齢…31.1歳
実際の手術
骨折して早い時期に手術をした方は術後約6週で骨癒合しています。
手術時間
骨移植なし | 46症例 | 3分~29分 | 平均11.4分 |
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骨移植あり | 6症例 | 36分~88分 | 平均64.5分 |
Type A/B 線状型 | 術後3~4週間ギプス固定もしくはシーネ固定 |
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Type C/D 嚢胞型・偽関節 | 骨癒合確認まではシーネ固定を延長 [平均]C: 約5週(6/7例で)、D: 約12週(5/6例で) |
結果: 骨癒合は全例に見られた
症例供覧
Type A2 : 線状型・新鮮骨折
(15歳男性 剣道部)練習後、疼痛あり受診。2日後に手術。
Type C : 遷延治癒・嚢胞型
(17歳男性 サッカー部)2ヶ月前から疼痛あり、医療機関受診せず、スポーツを続行していたが、痛みが持続し紹介受診。県外就職決まっており手術希望。抜糸後からセーフス使用した。
Type D2 : 偽関節
(42歳男性)
25年前骨折と言われている。骨硬化部分を切除して骨移植
術後2日
術後6週
経過良好と判断しましたが、その後骨吸収像が見られました。
術後6ヶ月
移植骨中枢部の透亮像ありセーフス開始
術後8.5ヶ月
骨癒合良好
手術適応は?
・痛みを伴う嚢胞型、偽関節は問題ないが、新鮮例は保存的に治療可能なので患者さんの希望次第。
今回、線状骨折受診総数85例で、手術39例45%の手術であった。多いのか少ないのか?
嚢胞型に骨移植は必要か?
・特に腰部であれば遷延癒合例でも経皮的骨接合術は十分に適応あり。
舟状骨遷延癒合例に対する経皮的骨接合術の適応 岡田貴充ら 日手会誌 第25巻第6号907-909、2009
・嚢胞型も骨移植なしで十分に骨癒合が期待できる。アキュトラックを推薦。
舟状骨骨折のレントゲン所見に基づいた治療方針 池田和夫 日手会誌 第24巻第2号58-62、2007
今回、嚢胞型は経皮的骨接合のみで7例全例に骨癒合が得られた。
掌側、背側アプローチは?
・骨折線に対してできるだけ垂直に挿入するにはB1背側、B2掌側が良い(森友)。
・背側アプローチが良いとする報告もある(吉川、川上)。
・掌側アプローチで十分(川崎)。
今回、掌側アプローチで良好(ただし近位骨折は除く)な結果が得られた。
スクリュー長について
・骨折型に関わらず、垂直挿入20mm、長軸挿入24mmが目安。
・舟状骨骨折の至適スクリュー長の検討 中谷卓史 日手会誌 第31巻第6号887-890、2015
・軟骨厚もあり刺入部位決定の困難さもあり、海綿骨だけにスクリューを留置するのは意外に難しい。
今回、長軸挿入で平均24mmであったので、中谷の報告をサポートする結果となった。
骨折部が線状の症例や、嚢胞型で骨吸収像があっても骨折部が骨硬化していない症例は局麻下にスクリュー挿入のみで治療可能でした。
46例の手術時間は平均約11分で、大半は10分以内。外来診察の合間にも行えました。偽関節の6例は前腕静脈麻酔で骨移植を行いましたが、これらも外来手術で治療できました。
DTJ screwは使い慣れれば手術は容易で固定性も良く信頼でき、舟状骨近位の骨折でなければ、掌側長軸挿入で満足すべき結果が得られました。ガイドピンを刺入してそれをイメージ下に軸写で点として捉える方法は手術時間短縮に大いに貢献しました。